草庵_店舗外観

創業から20年近く、地域に愛されるさぬきうどん専門店

2022/10/19

2004年の創業依頼、地域の人々に愛されている「さぬきうどん工房 草庵」。

創業当時、養父市近郊にさぬきうどんの店はなかった。店名の「草庵」は、儒学者 池田草庵が但馬地方に学問を広めたように、美味しいさぬきうどんを多くの人に食べてほしい。という思いが込められている。

18年経った今もさぬきうどん一筋で、無添加素材を使った本格的なうどんを作り続けており、いわゆる何でもあるような食堂形式ではない。

「先代から受け継いだ、うどん専門店という芯は曲げずにまっすぐやっていきたいんです」と、2代目の米本謄人(のりひと)さん。先代から受け継いだ事業への想いを伺った。

 

突然の事業承継

2020年の春に父である先代が急逝し、店を継いだ謄人さん。ちょうど前年の年末に商工会開催の事業承継セミナーを受講し、

「親はいつどうなるかわからないから、もしもの時に備えて必要な技術は早く学んでおいた方がいい」と、アドバイスを受けていた矢先のことだった。

実家を離れて仕事をしていた謄人さんが養父に戻ってからは、先代である父が麺を作り、謄人さんが天ぷらを揚げるといった体制をとっていたが、その他のことはまだ教わっていなかったのだ。

 

先代の想いを継いで

 

先代である謄人さんの父は、もともと和食の料理人で、高校を中退後、岡山で修業し料理人になった。その豊富な経験から得た技術を活かして作るうどんだから、味はピカイチだ。

「父はまさに職人といった人で、必要なものはなんでも自分で作っていました。麺の材料の配合や、出汁のレシピもしっかりと分量を書き残してくれていました。そのおかげで、創業から続く草庵の味を引き継ぐことができました」と謄人さん。

 

とはいえ麺打ちや出汁作りには不安があった。そこで、先代がお世話になっていた四国香川の勉強先で、うどん作りを改めて学び、素材についても理解を深めていった。

そこで学んだ知識と、先代の仕事を横で見て覚えた技術、さらに独自の工夫で現在までうどんを作り続けている。

 

シンプルな料理だからこそ

 

謄人さんは言う。

「うどんというものは、材料や配合をレシピの通りに作っても同じ味になるとは限らないんです。シンプルであるが故に、その日の気温や湿度といった僅かな要因で変わってしまう、まるで生き物のようなものなんです。」

草庵で使う国産小麦粉はすべて天然の材料なので、年によって若干特性が異なる。そのため、少しずつ配合を調整している。そうした小さな差を見逃さないのが、変わらぬ味を提供する職人技なのだ。出汁は、変わらぬ草庵の味にこだわり、かつお節などは配合を綿密に擦り合わせた上で業者に依頼して納入してもらっている。

 

「うどんは、安く食べようと思えばいくらでも安いものがありますが、当店で食べていただくからには、美味しいものを食べてほしい。お客さまには、美味しかった!という思い出を残していただきたいんです」

 

これからの時代へ向けて

 

2004年の創業当初、さぬきうどんは但馬地域ではほとんど広まっていなかった。当時のうどんは、すぐに作れて、甘辛い出汁に柔らかい麺が定着していた。

対してさぬきうどんは作るのに時間がかかり、麺に弾力があり、出汁は醤油の辛みがある。但馬地域では、受け入れられない雰囲気が強かった。

しかし同時期、全国的に空前のさぬきうどんブームが巻き起こっていた。香川県の製麺所でうどんを食べるのが流行り、さぬきうどんの味が全国に広まり、2006年には映画「UDON」が公開されたほどだ。

 

但馬でさぬきうどんが受け入れられるようになったのは、そのブームから5、6年過ぎたころだった。背景には、スマートフォンやSNSの普及が関わっているのではないかと謄人さんは考えている。個人の投稿が大きな反響を呼ぶこともある今の時代。謄人さんはSNSの運用に力を入れている。

「何を発信するか、どう伝えるか。投稿したことですぐに効果が出てくることは稀ですが、こまめな投稿が後になって響いてきますね」

最近では、所属している養父市商工会の青年部で開かれたInstagramの運用の勉強会にも参加し、これからの傾向や効果的なストーリーズの使い方などを学び、SNSをさらに効果的に活用している。「こういった場で学ぶことで、店だけでなく地域を盛り上げていきたい」と意気込む。

 

現在は店舗の方に力を入れているが、通販にも取り組んでいる。しかし、限られた従業員で通販の対応をするのが大変になる時期もあり、なかなか注力することができない。

その課題を解決するべく、新たに半生麺を商品化する構想を練っている。完成すれば、生麺と比べ保存期間が長い分、お土産に買ってもらいやすくなる。

謄人さんが事業を継いでから、新たに経営理念を制定した。

「地元地域の人達の、生活シーンのひとつとなる」という理念を抱え、お客様にとって日常的な、安心して食事ができる場にしたいと謄人さんは語った。

昨今のコロナ禍に加え、但馬の人口が減少している現実がある。

年配の方にも食べてもらえるようにテイクアウトを充実させていこうか、食べに来たことがない方にサンプルの麺を配ってみようか、養父はスキーや海に遊びに行く人の通り道なので、そういったアクティブな層に向けたアプローチをしようかなど、様々な策を考えている。

 

「美味しくて思い出に残る、美味しいと満足していただけるうどんを作ります。ぜひ、一度食べに来てください!」と謄人さんとお母様。

 


さぬきうどん工房 草庵

  • 〒667-0021 兵庫県養父市八鹿町八鹿1853-3
  • Tel.079-662-7101
  • 営業時間 11:00~15:00 17:00~20:00(夜は火・水・土日のみ)
  • 定休日 月曜日(祝祭日は営業)
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