「一粒に一生の恋を」米作りに込める思い

2023/07/03

農業は私たちの生活において重要な役割を果たします。
食料供給の基盤となる農業は、地域経済や環境にも大きな影響を与えます。

今回は、稲作をはじめ今年でちょうど70年。
養父市大屋町で稲作農家を営む、株式会社プライズの代表取締役である中島さんにお話を伺い、取り組みや挑戦について探っていきます。

 

中島さんが稲作を始めた経緯とは?

 

18歳の時、中島さんは祖父が営んでいる稲作農家を継ぐことに魅力を感じず、都会でのサラリーマン生活を選びました。
しかし、忙しない都会生活で疲弊していく中で、地元の自然環境や人々の温かさを思い返すようになったそうです。そして中島さんは、結婚をきっかけに地元に帰省することを決意しました。

「実を言うと、帰ってくる気はありませんでした。
しかし、立場が変われば視点が変わるってよく言うじゃないですか。もし将来、子供が生まれるとしたら田舎がいいなと思ったんです。その中でも養父市は、乳幼児の医療費助成制度や保育所の無償化など、子育てに関する制度が整っていて、その点において非常に魅力的に感じたんです。そこも大きな決め手の一つでした」

こうして地元に帰ってきた中島さんでしたが、やはり農家を継ぐことにはあまり乗り気になれずにいたそうです。
しかし家業だから…としぶしぶ取り組んでいく中、徐々に農業の奥深さ、時間に捕らわれない自由な働き方の魅力に気付き始めたといいます。

農業は毎年同じことをしていればうまくいく、ということは決してなく、その年や時期に応じた手段や対策を選び、柔軟に対応することが求められます。こうして土地との触れ合い、そして厳しくも雄大な自然の営みに参加することで、中島さんは農業の魅力に目覚めていったのです。

 

美味しいお米をお届けするために

 

中島さんの管理する田んぼの面積は8町で、枚数で言えば72枚に及びます。
※1町は約1ヘクタール
「この広大な面積を管理するのはなかなかに骨が折れます…」と中島さんは苦笑い。

特に夏場は雑草の成長が盛んで、熱中症に注意しながら、社員一同で草刈りに取り組んでいるそうです。
夏の炎天下での作業は過酷で、田んぼの草刈りは3回往復で行われるため、忍耐力が試される作業になります。それでも、稲作においては欠かせない作業であり、一同力を合わせて取り組んでおられます。

美味しいお米の裏側には、多大な努力がありました。

 

畜産家との循環型農業への取り組み

 

中島さんはおいしいお米の生産だけでなく、地域への貢献も大きな目標として掲げています。

農業人口の減少が進む中、プライズは地元の農家、畜産家と一丸となって農業を盛り上げていこうとされており、牛舎・鶏舎・豚舎など、複数の畜産家と契約し、商品として売りに出せなかった「くず米」を飼料として供給し、畜産家からは「堆肥」をいただいているそうです。

こうした関係は15年にも及ぶもので、お互いがよい循環を生み出しています。
堆肥はすべて田んぼに撒き、10月の終わりから12月の半ばまでの期間に作業が行われます。堆肥は栄養素が豊富な有機肥料であり、稲の生育に大いに貢献してくれるそうです。

中島さんは減農薬農法にこだわりを持ち、最低限の農薬しか使用しないそうです。

だからこそ、草刈りで雑草の繁殖や病害虫の発生を防止をすることや、良質な有機肥料を使いしっかりと栄養を蓄えた土壌を育てていくことが重要になってくるそうです。このこだわりがプライズのお米が美味しいと評される理由となっています。

 

プライズの社名に込められた想いとは?

 

「プライズ」という社名。そこにはいくつもの想いが込められていました。中島さんはこう語ります。

「一つ目は、プラス『ライス』です。私たちの作ったお米を日々の食卓にプラスしてほしい。という思いがあります」

「二つ目はプラス『ライズ』です。ライズ(Rise)は上昇する、という意味があり、私たちの会社ふくめこの地域の企業さんと一緒に養父市をもっと盛り上げていきたい、一緒に上昇していきたい!という思いを込めています」

「そして最後は、『サプライズ』です。これは、お米を通してお客様にお届けする、驚きと感動を。という意味合いです。『一粒に一生の恋を』というモットーを掲げているんですが、プライズのお米を食べていただき、普段食べてるお米と全然違う!また食べたい!そう感じていただけたらな、という思いを込めています」

プライズで展開している商品には、お中元やお歳暮のギフト用商品やアウトドア用の商品などがあり、それぞれの商品には異なった雰囲気のパッケージがあしらわれています。

「お中元やお歳暮のギフトは、かわいらしいパッケージにしています。これは、『なにかお返しがしたい』と思われるのは女性が多いためこういうデザインにしています。一方でアウトドア商品は、洗練された雰囲気にしています」

商品を一見しただけでも、ターゲットの違いがしっかりと分かります。
稲作だけでなく、ブランディング方面もぬかりなく手掛けておられる中島さん。現在のパッケージに刷新したのは2年ほど前とのことです。刷新の理由や経緯について、中島さんはこう続けます。

「私たちがお米を育てている大屋町という地域には、蛇紋岩土壌が広がっているんですよ。この土壌はお米にとってすごくよい環境なんです。ミネラル分が豊富で、ここで育てられたお米はとっても美味しいんです。もちもちとした食感で味も良く、粒が大きく育ちます」

「プライズで販売しているお米も、もちろん蛇紋岩土壌栽培のお米なんですが、他企業さんもこれを売りにしているわけです。なので、売り出しのアプローチを変えよう!ということでパッケージや商品名の刷新に踏み切りました。うちのお米が美味しいことはもちろんなので、プラスワンで強みを出したかったんです」

世の中に蛇紋岩土壌栽培を一番の売りにしたパッケージが多い中、プライズならではの斬新なデザインやネーミングが光っています。

 

これからのプライズ

 

「今後の展望としては、養父市に限らず農業人口が毎年急速に減少していることに関して、私は非常に心配しています。お米を作る農家の数も減ってきており、稲作農業自体が衰退している状況です」

農業人口は基本的に団塊の世代に属しており、その多くが現在80代に近づいており、肉体的・精神的に続けられなくなり、作物が育たない状態になっているそうです。そして、その世代の後継者もあまり存在しないのが現状です。

こうした状況の中で、プライズはどのように立ち回っていくのでしょうか。

「もちろん、全体的に農業を盛り上げることが必要だとは思います。ですが、私個人の展望としては、お米の生産者が少なくなり、スーパーなどの小売りで買う人が増えていく時代に近づいていると感じており、結果としてプライズのお米を手に取っていただけるチャンスが増えていくのではないか、と考えています」

中島さんと同じ世代で、同じような規模、熱量で取り組んでいる農家はわずかだといいます。
だんだんと農業人口が減り、買い手が増えていく状況になりつつある現状は、結果的にプライズのお米の市場価値を高めていくことになるのです。

「そのくらいの自信をもってお米作りに挑んでいるので、もっともっとたくさんの人がプライズのお米を食べて、おいしい!と驚いてほしいと思っています」と語ってくれました。

地域の発展のみならず、自社での活動を長期的に続けていきたいという思い。柔軟に現状を捉え、将来起こりうる変化に対策を講じていく姿勢は農業に通じるものがあります。
未来を見据え、美味しさと驚きをとどけるプライズは、地域の農業をリードしながら、ますます上昇していくことでしょう。

 


株式会社プライズ

  • 兵庫県養父市大屋町中491番地(本店)
  • Tel.079-669-0015
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