氷ノ山を一望、ハチ高原の新スポット!

2021/10/28

養父市関宮鉢伏山の麓に広がる鉢伏高原、通称ハチ高原。冬はスノーリゾートとして、グリーンシーズンには学生の教育旅行や合宿地として賑わう。四季折々、多くの見どころに溢れた関西屈指のレジャースポットだ。

そんな養父市を代表する観光地ハチ高原で民宿を営む「ロッジみやま荘」を取材した。

ロッジみやま荘は昭和43年創業、ハチ高原でも老舗の民宿である。自慢の手作り料理と顧客目線の手厚いおもてなしが評判で、毎年訪れるリピーターも多いという。

話を聞いたのは三代目オーナー 濱 靖典さん。ハチ高原で生まれ育ち、幼少期からスキー漬けの日々を送っていたという。

スキーに明け暮れた青春時代

「子どもの頃は、冬になると家から学校までスキーで通っていたんですよ。」

突飛な話にも聞こえるが、濱さんだけが特別そうしていたのではない。当時、ここでは誰もが当たり前にスキー通学をしていたそうだ。

「スキーが移動手段とか生活の一部になっているような場所で暮らしていると、当然滑るのも上手くなるので。長くやっていると、そういう違いが大きく感じられて――」

学生時代、熱心に取り組んだスキー競技。地方大会では結果が残せても、全国規模の大会では思うように成績が伸びないこともあったという。豪雪地、西日本有数のスキー場と言っても、春になれば雪は溶けて、一年中スキーができるというわけでもない。それが世界との差。練習だけでは埋められない環境の違いを感じたそうだ。

もっと本気でスキーに取り組みたい。より良い練習環境を求め、より“暮らしに根付いたスキー”に魅力を感じ、本場ヨーロッパでの生活を夢見たという。その資金集めのため、始めた家業の民宿アルバイトで、その後の人生を変える“教育旅行”と出会うことになる。

子どもたちの成長が新しい夢に

修学旅行や林間学校、スキー教室など教育上の目的で実施される旅行を教育旅行という。学習プログラムやイベント企画などの内容は、受け入れ先の施設も一緒になって作り上げるそうだ。

濱さんも子どもたちの成長を間近に感じられるその仕事にやりがいを覚え、より良い経験にして欲しいと努力する中で、いつしかそれが新しい夢に変わっていったという。

「子どもたちとの関わりの中で教えられることも多くて、こちらも日々勉強させて貰ってます。教育旅行に携わることで地元の良さを再認識することもできました。」

3代目として経営を任されるようになったのが今から12年前。濱さん33歳の頃。仕事の進め方など先代から多くを学んだのかと思ったが、意外なことにほとんど何も教えられていないそうだ。

「今思うとそれが親父(先代)の教育方針だったのかもしれません。とりあえず自分で考えてやってみろと――」

自分で考えること。それは現在、濱さんの教育哲学にも受け継がれている。

学校生活だけではできないこと

この時代、あえて薪から火を起こしたり、それでお米を炊いたりする必要はないかもしれない。それでも、林間学校などの行事で皆一度は飯盒炊爨をしたことがあるだろう。何のために?

「火を扱う機会がないと、本当の意味でその怖さも有り難さも分かりません。これも大切な教育なのだと思います。自宅や学校ではできない経験が、災害や不測の事態に必ず役立つんです。」

選択肢を与えるだけでなく、することの意味を考える。何もかも指示通りの作業ではなく、発想や自主性を重んじる。ただやるのでなく、考える機会を提供したい。指導者と生徒ではなく、子どもたちとも対等な関係を心がけているそうだ。

ハチ高原の雄大な自然に囲まれ、伸び伸びと過ごす子どもたち。家や学校ではできない経験を通して成長する姿。生き生きとしたその表情が、何よりもやりがいになるのだという。

だからこそできること

本来ならこの時期は教育旅行中の学生で賑わい、もっと忙しくされているそうだ。多くの観光地と同様、ハチ高原もコロナ禍の影響を避けられてはいない。現在 “三密”を避けるため複数の施設が連携し、子どもたちを分散して受け入れるなどの対応を取っているそうだ。

観光地における同業者はライバルであると同時に、同じ観光資源を共有する仲間でもある。苦楽を分かち、助け合う想いは誰もが共通に持っているという。

濱さん自身もこれまでに地元観光協会の会長や有志の代表などを務められ、地域のために尽力されてきた。ハチ高原の若手?で作るチーム“マウント8”では、サバイバルゲームや焚き火まつりなど、従来ここにはなかった様々なイベントの企画実施にも携わったそうだ。

「スキー以外にもお客さんの目当てになる、ハチ高原の新しい魅力や見どころを作りたいんです。」

そしてこの春、ロッジみやま荘でも“こんな時”だからこそ出来ることがあると、以前から考えていたあるアイデアを実現させた。

ここから見える景色

目の前には兵庫県最高峰 氷ノ山の美しい景色。雄大な自然に囲まれた開放感あふれるオープンテラスだ。こんなロケーションでコーヒーを飲みながら--なんて贅沢な時間だろう。濱さんは毎年屋根の雪下ろしをしながら、この景色を眺めて想像を膨らませていたという。

「数年前からここにテラスを作りたいと思いながら、なかなか手がつけられなかったから、そういう意味では良い機会になりました。」

このオープンテラスは氷ノ山を望む撮影スポットとしても随一というが、現在コロナ禍ということもあり大々的な宣伝はおこなっていないそうだ。まずは口コミや人づての紹介で徐々に来客を増やし、いずれはここを目当てに観光客が訪れる場所にしたいと夢を語る。

「季節ごとの景色の違いや変化を楽しみに、何度も来て貰えるようなハチ高原の新しい見どころにしたいです。」

新緑。紅葉。雪景色。春夏秋冬、色とりどりの自然の表情。夜は輝く満点の星空。ここから見える景色はどれも格別という。状況が落ち着いたら、皆さんも是非ハチ高原の新スポット“ロッジみやま荘 オープンテラス”で、美しい眺めとくつろぎのひと時を味わってみてはいかがだろうか。