美しい町に夢を、廃棄物処理のことならすべておまかせ!
環境問題が取りざたされ、ごみやリサイクルについての関心が高まっている今日。「美しい町に夢を」をスローガンに、廃棄物の処理、資源の有効活用、地域の美化・活性化に取り組む環境整備西山を取材しました。
自然豊かな養父市の中でもいっそう山深い大屋町筏。そこに環境整備西山の工場があります。会長の西山勝広さんと、息子で三代目社長の西山勇生さん。お二人に話を聞きました。
「ごみの分別」のプロフェッショナル
-環境整備西山の事業内容を教えてください。
「簡単に言うと、企業から排出されるごみを収集して分別する仕事です。」
ごみ(廃棄物)は大きく、家庭から出る一般廃棄物と事業者が排出する事業ごみ(産業廃棄物)に分けられます。前者はまちのクリーンセンターが処理するのに対し、後者は排出事業者が専門の処理業者と事前に委託契約を交わし、適正な方法で処理する必要があります。
環境整備西山は事業者が排出する様々な廃棄物の収集、自社工場での分別・保管等を主な業務としています。
事業ごみの処理フロー
「機械ではなく手作業で分別しており、もしもごみの中から重要物が出てきた場合、本当に廃棄して良いか確認したり一時預かりをしたり、顧客に寄り添った対応を心がけています。」
一言で「分別」と言っても、実際の作業はより複雑。その一例をご紹介しましょう。
洋服店からの事業ごみ。素人目にはどれも同じプラスチックハンガーに見えますが、プラスチックにもいくつか種類があるそうで(曲げるとパキっと折れるもの、弾力がありグニャッと曲がるものなど)素材の違いを確認して、さらに分別していく必要があります。
掃除機やラジカセなどの家電製品、シルバーカーなど。この様にプラスチックや金属等、いくつかの素材からなるものは一つのごみとして片付けず、可能な限り素材ごと細かく分別していくそう。
なぜそうするのか?その方がリサイクルできる資源が増えるからです。
「資源ごみ」という言葉には、皆さんも馴染みがあるでしょう。ごみの中にはリサイクル(再利用)可能なものが多く含まれているため、その分別には資源を有効活用するという側面もあるのです。活かせる資源は最大限活かすのが西山流分別術。
この他にもごみの種類や素材によって異なる手順や決まりがあり、「分別」は知識と経験が必要な作業となります。環境整備西山には高いスキルを持ったベテランの職員が多く、この日も各自が黙々と作業されていました。
困っている人たちを見過ごせなかった。
―なぜ廃棄物処理業務に取り組まれるようになったのでしょうか。
環境整備西山は昭和48年に創業。当初は先々代(創業者)が「西山商店」として、主にクリーンセンターからの委託で不燃物(缶・ビン・粗大ごみ等)の仕分けをおこなわれていたそうです。またその頃、勝広さん(会長)はクリーンセンターの職員として、今とは違う立場でごみの分別や処理に携わっておられました。
廃棄物処理について、かつては今より規制が緩く「何でもかんでも」クリーンセンターで引き受けていたといいます。それが次第に改められ、分別やリサイクルについてのルール、法改正等がおこなわれていくのですが――。
「今までごみとして普通に受け入れていたものが、これは産業廃棄物だ。これも産業廃棄物だという状況になって、クリーンセンターで取り扱うことができなくなりました。では産廃をどこへ持って行けばいいかと問われても、当時の養父市には対応できる業者が一つもなかったんです。」
クリーンセンターの職員として、産業廃棄物の処理に困っている地元業者や工場の方々を間近で見ていた勝広さん。地域の抱える問題なら他所に任せるのではなく、この地域の誰かがそれに取り組む必要がある--それなら思い切って自分がやってやろう!と考えました。
そしてクリーンセンターを退職。ごみ処理等の資格を取得され事業継承。新たに産業廃棄物処理や事業ごみ収集を業務に加えられました。その後、平成15年に法人化。社名を「有限会社環境整備西山」として今にいたります。
安定した公務員という職を辞して事業を始めることに、最初は周囲から戸惑いや不安の声もあったそう。それでも最後は勝広さんの熱意が勝り、応援しよう、一丸となって頑張っていこうと決めたそうです。
「廃棄物を取り扱うので大変なこともあります。決して割りのいい仕事ではありませんが、近くに困っている人がいて、それがどうにかできることなら、自分が率先して取り組むべきだと思いました。」
地域への想いに溢れる勝広さん、そして環境整備西山。
ある時はクリーンセンターで断られたというごみを無償で引き受けたり、またある時は地域に無料の金属廃棄物収集コンテナを設置されたり(通常は処理費用が掛かる)。さらには剪定屑・木くずを使ってカブトムシの幼虫を飼育し、近隣の保育所などへプレゼントもされています。
これらは利益優先の企業には決してできないこと、地域密着企業だからこそできる取り組みではないでしょうか。しかし近年、処理費用の高騰や競合他社との競争など、業界を取り巻く状況、見通しは芳しくないといいます。そこで環境整備西山では若い三代目社長、勇生さんが中心となり、これまでとは少し違った視点で先を見据えた取り組みを開始しました。
感謝して感謝される仕事がしたい。
―現在注力されている「遺品整理」の仕事について教えてください。
「遺品整理とは、家主が亡くなって空き家になった家屋や部屋などを、遺族に代わって片付けたり、必要品と不要品の仕分けや遺品に関する相談を受けたりする仕事です。」
ここ養父市でも少子高齢化や過疎化が進み、各所で空き家が増加傾向にあります。人が住まなくなった家屋、適切に管理されていない空き家は数年で廃墟となり、倒壊など周囲に危険や害を及ぼすこともあります。
そのため行政でも「空き家バンク」等のシステムを活用し、問題の解決に取り組んでいるのですが――たとえ立地や間取りなど条件に合う物件が見つかっても、屋内が片付いていないとか部屋が荒れ放題だったりすると魅力がなくなってしまいます。
※写真はイメージです。
※写真はイメージです。
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そんな時、持ち主に代わって空き家の片付けをおこなうのも遺品整理の仕事の一つです。勇生さんは昨年「遺品整理士」の資格を取得された、まさに遺品整理のスペシャリスト。仕事では、お客様、取引先、自治体担当者など、皆と顔を合わせてすることを大切にされているそうです。
「電話で依頼を受けることもできますが、実際にお客様と顔を合わせて話をすることで、本当に困っておられることが分かったり、最善の提案ができたりします。」
お金を貰って決まった仕事をするだけではなく、顔を合わせて言葉を交わして、お互いが感謝し感謝される仕事がしたいと勇生さんはいいます。
「空き家の管理にお困りの方は、とにかく何でも捨てようとされがちですが、故人の人柄や想いをしのび、どんなものでも大切に扱うように心がけています。」
空き家の片付けにおいても、ごみの分別や廃棄物処理で培われた高い技術と知識が活かされ、その作業は迅速丁寧。最初は足の踏み場もないほどに荒れていた物件であっても、最後は部屋の一つ一つ、押入れの中までほうきで履いて掃除していくのだとか。
「『こんなにキレイにしてくれてありがとう』という声を聞くとやり甲斐や達成感があります。そう言っていただけるように最高の仕事をしたいと思っています。」
感謝して感謝される仕事。当たり前のことなのかも知れませんが、働くことの本質について今一度考えさせられる言葉でした。
日本初の”パッカー車”を操る!
筆者は仕事柄、様々な業種の方から話を聞く機会があり、その業種ならではの小話や豆知識が得られることを密かな楽しみとしております。
こちらは皆さんお馴染みの「ごみ収集車」です。ごみを集める機能か、はたまたその見た目か、不思議な魅力があって特に子どもたちに大人気。私も幼少時にごみ収集車のミニカーを持っておりましたし、近所のごみ置き場に収集に来る姿を待ち伏せして眺めていた記憶があります。
それはさておき、このごみ収集車を業界では「パッカー車」と呼ぶそうです。「パッカーン!と開くから」という説もありますが、正しくはパック(詰め込む)が語源のようです。また正式名称は塵芥車(じんかいしゃ)とも言うそうで、一つ勉強させていただきました。
暮らしの中でよく目にするこのパッカー車ですが、環境整備西山さんが有するものには導入時「日本初」だったという優れた機能が備わっています。
それがこちら、ごみ収集と同時に計量が可能な装置です。
ごみを入れる
重さ(kg)が表示される。
データをパソコンに取り込める。
市内の事業者からごみを集める際、その場で計量して費用を算出できたり、計量結果をパソコンに取り込んでデータ化することが可能なのだそう。計量データは排出事業者にも提供されるので、過去のデータと見比べてごみの排出量削減に役立てることができるなど、顧客にとってもメリットのある機能となっています。
そしてこの計量機能付きパッカー車による収集業務を一手に引き受けられているのが、昨年入社された一番の若手社員なのだとか。ベテラン社員が苦手とするデータ入力やパソコン作業を難なくこなしてくれるのでとても助かっているそうです。
このように環境整備西山では新たな力も必要とされており「元気があってやる気があれば大歓迎!」それに中型免許があれば言うことはないそうです。各種免許や資格取得の補助もおこなわれており未経験者へのサポートも万全!興味が湧いた方は是非お問い合わせされてはいかがでしょうか。
ベテランと若手の相乗効果でさらなる飛躍を
―最後に今後の展望をお聞かせください。
「同業社との競争の中でも、地域に密着したきめ細かいサービスをモットーに、住民の皆さんが不用品処理で困ったことがあれば『西山に頼んだら大丈夫』と言っていただける、そんな会社を目指していきます。」
2019年10月、事業継承により三代目社長を託された勇生さん。会長が築いた産業廃棄物処理業務に加え、そこから一歩踏み込んだ遺品整理の仕事をもって、これからの環境整備西山を導いていきます。
「都会と地方では遺品整理の考え方に温度差があるのが現実です。こっちでは本当に何もかも捨てて欲しいとおっしゃる方が多いです。やむを得ない事情もあるのでしょうが、そうしたお客様の事情も考慮し、故人の想いにも寄り添えるような、サービスの向上に努めていきたいと思っています。」
空き家の増加などで今後需要アップが見込まれる遺品整理の仕事は、環境整備西山のみならず、この地域にとっても希望となり得るのではないでしょうか。会長の勝広さんはこう続けます。
「これからは社長が会社を良い方向へ引っ張っていってくれると思うので、私は工場の設備や機材を良くしたり、皆が働きやすい環境を作るサポートをしていくつもりです。」
ベテランの知識・技術に、若い発想とエネルギー。それらの相乗効果でさらなる飛躍を予感させる環境整備西山の取材レポートでした。