家具と雑貨の二刀流、キラリと光る職人技

2019/06/17

今や、大量生産された既製品の家具がたくさん普及している時代。そんな中、丁寧にコツコツとオーダーメイドの家具作りをしているお店が八鹿町にあります。家族でお店を切り盛りする「山根家具」です。数年前からは、家具工房の横で雑貨屋さんを始めるなど、新しいことにもいろいろ挑戦している様子。3代目の山根良広さんと、奥さんの佐恵さんにお話を伺いました。

山根さん夫妻

なんでも作ります

山根家具の創業は1945年頃。良広さんのおじいさんがこのお店を立ち上げました。創業当時から家具の製造・販売はしてきましたが、オーダーメイドの家具に力を入れ始めたのは良広さんの代になってから。こだわりを持つ消費者が増えてきたことなど、時代の流れに伴ってオーダーメイド家具の需要が高まってきたといいます。

作るのは良広さんと、2代目社長のお父さん。
「素材が木ならなんでも作りますよ」と、良広さんは話します。一般的な家具にはじまり、既製品にないサイズの棚や病院などの業務用カウンター、さらには、お寺の位牌台も作ったことがあるんだとか。また、大工さんからのオーダーで作り付けの家具を製造することもあるといいます。

丈夫な造り、アフターフォローで何十年も使える家具

山根さんが作る家具の特徴は、なんといっても丈夫なこと。長く使ってほしいから、家具の耐久性を高めるような造りにしているといいます。例えば、板と板の間の骨組みに使う角材は、ケチらず必要な分だけ使うなど。これは創業当時からのこだわりで、その甲斐あってか「おじいさんの頃に作った家具を現役で使ってくれているお客さんもいるんです」と佐恵さんは話します。

また、商品が丈夫なことに加えて喜ばれているのが、設置まですること。できた商品はお客さんの家まで運び、その場所に合うように設置。設置しながら家具の立て付けの最終調整をしたり、コンセントがある部分はその場でくりぬいたり。お客さんひとりひとりに心地よく使ってもらうために、最後まで配慮を怠らないといいます。もちろん、修理などのアフターフォローもお任せあれ。

オーダーメイドは値段が高いイメージだけど、「お客さんからは『ココまでやってもらっているのにこの値段!?安い!』と言ってもらえる」と、良広さん。
「オーダーメイド業界の中で安いかはわからないけれど、確かに、利益分をそんなにとってないのかも(笑)。それでもやっていけるのは家族経営だから。お客さんの予算など、いろんな要望に出来る限り沿いたいと思っています」

雑貨屋で人気、他のお店にはない「クラフト細工」

そんな山根夫妻、2007年からは、家具工房の隣で「cotree(コトリー)」という雑貨屋さんも始めました。

お店にお邪魔してみると、そこには可愛らしいカントリー調の家具や雑貨が並んでいました。木のアクセサリーに文房具、布カバンなど、見ていたらついつい欲しくなってしまう……。良広さんが手作りしたものや、佐恵さんがセレクトしたものを販売されています。

そんな中、「数年前から人気が出始めているモノ」がお店の奥にあるとのこと。覗いてみると、先ほどとはテイストが違う、木で作ったブローチやピアス、ネックレス、置物などの木工細工が置いてありました。これは、数年前から良広さんが作るのに熱中している「クラフト細工」。生き物や虫、食べ物をモチーフにしたものもあれば、ぬいぐるみや小人など絵本の中に迷い込んだような作品もあります。どれも木で作られたとは思えないくらい緻密!

中でも目を引いたのは、クリスタル製のガラス玉を使う「サンキャッチャー」と木工細工を組み合わせたインテリアグッズ。これは良広さんがクラフト細工に没頭するようになったきっかけのアイテムだといいます。

「カントリー調の家具を作っていた時は、どこか誰かの真似をしているような感じだった。木とガラス玉という異素材を組み合せて商品を作れた時は、他のお店にはないものができた!って興奮しましたね」
柔らかな曲線を追求した細かい作り込みは木工作家の知り合いから「変態」と言われるほど。お客さんには木そのものを楽しんでほしくて、色は塗らず、いろんな樹種を使って色を表現するのがポリシーなのだといいます。

「ナチュラルで気取らないカントリー雑貨屋さんのはずが、強烈な作品に押されはじめています」
と、佐恵さんは笑います。

クラフト細工で認知度が上昇中

人気が出始めたcotreeのクラフト細工。オリジナルのオーダーもできるので、お客さんからはちょっとしたプレゼントに最適だと喜ばれています。県内外のイベントへの出展も増えて来て、「家具屋が作るクラフト細工」としての認知度も上がってきました。

良広さんの夢は、家具でもクラフト細工でも「山根の名作」と言われる突き抜けたモノを作ること。その目標に向かって、「家具屋としては丁寧な仕事を続けて、出来る限りクラフト細工にも精力的に取り組みたい」と、話します。
佐恵さんは、「手作りのものはパワーをもらえる。cotreeに来て、雑貨を見て、リフレッシュできたり、気持ちを上げられたり、そんな場所を作っていきたいです」と話してくれました。

使いやすいアクセサリーから、良広さんの世界観が広がるクラフト細工まで、近い将来、養父市の特産品・お土産品として注目されそうだと感じました。