有名鞄メーカーのシビアな要求にも応える!鞄職人集団

2019/05/29

養父市の中でも自然豊かな町、大屋町。清流、大屋川のほとりにある「荒木産業有限会社(ARAKI-KABAN)」。

取材を前にホームページを拝見すると、鞄を製造している会社さんとのこと。養父市のお隣、豊岡市も鞄産業が盛んなので、もしかしてそちらから派生した会社さんかな?などと勝手な想像をしつつ、社長の荒木成則さんと奥様にお話しを伺いました。

 

スタートは大阪から持ち帰った内職から

もうすぐ50周年を迎えられるということで、会社の始まりをお聞きすると荒木産業の始まりは戦後から。

先代が大阪に住んでいた際に見つけたポーチなどの小物を縫う内職。

当時、大阪から大屋に帰ることが決まり、「内職なら大屋に帰ってもできる仕事だ!」と考え、個人で家庭用ミシンを使って始められたそうです。

その後、大阪の会社が自宅の近くに縫製工場を建てたこともあり、本格的に鞄製造に携わることに。最初は大阪の会社の下請けのかたちで事業をしていたが、その後独立する形で現在の「荒木産業有限会社」になったそうです。

起業したころは嫁入り道具に必ずミシンを持ってくるといった時代。大屋町内の奥さん達がカバンの縫製を内職にしやすい環境だったようで、たくさんの仕事を地域に出していたそうです。

聞けば、当時30代40代で内職していた方が90代になった今も現役でお仕事をされている方もいらっしゃると!

荒木社長も「普通は70代とか80代手前で仕事も終わりにすると思うんですけど、『できる事があるならします』って言ってくれて」と感心しきりです。

奥さんは「90代っていっても、も~バリバリ!仕事も綺麗やし、縫う工程もバッチリやし凄い!」と熱く語ります。

地域の人たちに支えられ、地域と共に成長してきた証と言える素敵なエピソードです。

ブランド商品への挑戦がさらなる技術の向上へ

現在の主力業務は某有名メーカーの鞄のOEM。こっそり教えてもらうと有名百貨店等で取り扱われる某ブランド!それがMade in OOYA!Made by荒木産業!

しかし、このOEMが軌道に乗るまでは大変な苦労があったそうです。

「とにかく縫い目一目でも指摘が来るんです。2㎝縫う間に縫い目が何目と言う感じで決まっていたり。ミシンも一台一台設定を変えてやらないとダメですし。

一目でも裏から下糸が見えていたらアウト。縫っても返品、縫っても返品なんていう事も最初はありましたよ。サンプル通りに1本1本丁寧につくるしかないです。やっぱり信用が一番大事ですから。」当初は荒木社長も従業員の方と一緒になって糸やミシンの調整に苦心されたそうです。

その結果、その品質の高さが認められ今では年間を通して注文が入るようになり、さらにシビアな要求に応え続けることで結果的に工場全体の縫製技術が大きく向上したといいます。そして様々な形状の鞄やポーチを手掛けるうちに、カバンと名前が付くものは何でも作れるといった対応製品の幅広さも同時に得ることができたそうです。

他にも医療用の鞄やレスキューバッグのような特殊な形や強度の必要な鞄、意匠登録も取った防犯対応パスポートケース、防犯ブザー内蔵鞄などアイデア商品も制作されたこともあるそうです。

また学生用の3WAYバッグにこども園のリュック、手提げなど身近な製品も手がけられていて、記者の子ども達も荒木産業さんの鞄のお世話になっている事実を知ることができました!

カバンの事なら何でもおまかせ!といったキャッチコピーががっちりはまる制作事例の数々です。

縫い目もワークライフバランスもキッチリ!

荒木産業さんでは従業員さんのほとんどが女性。

子どもを保育園に送ってから出社して子どもが帰る時間に退社されるといった子育中のママさんたちが活躍できる勤務体系も採用しています。

奥さんは「子育てって本当に大変でしょ?急に熱出したりするし。そんな時は『どうぞ休んで下さい(^^)』って気兼ねなく休んでもらいます」と笑顔で語ります。子育て経験があるからこそ仕事と子育て、家事をこなしていくことの大変さに理解があり従業員さんの働きやすさを一番に考えているからこその思いやりのある言葉が自然と出てくるのだと感心しました。

他にも、家庭の都合で仕事に出られないという方には在宅ワークも可能。

「ミシンなら何台でも貸出しますよ(笑)外に働きに行きにくい事情がある方っていらしゃるじゃないですか?そういう方でも空いた時間にちょっとずつでも仕事をしてもらえたら本当にありがたいですね。今働いている従業員さんもみんなゼロからスタートした方ばかりですし、初めての方にもわかりやすく丁寧にお教えしますので!」荒木社長も大歓迎です。

従業員さんたちも自分が作った鞄を持っている人や、お店で見かけたときは「あ!あるある!」と嬉しくなるそう。やっぱり自分の仕事が目に見えるとやりがいに繋がりますよね。

求人は男女年齢問わずとのことですので、ご興味がある方は荒木産業さんまでどうぞお問合せください♪

オリジナルブランド『E-Plus(エプラス)HYOGO-JAPAN』

今後の展開として新たにオリジナルブランドも展開できればと試作品を作る荒木社長。

3代目の息子さんが考えられたオリジナルブランド『E-Plus(エプラス)』は次のコンセプトを元に作られています。

 

『E-Plus(エプラス)』とは、「Everyday +(Plus) one itemを」という意味です。
「いつもお客様の生活に寄り添って、暮らしにプラスになるように」と考えられたロゴです。
少しでもお客様が +(プラス)になれるお手伝いができたらという想いを持って縁の下の力持ちになるようなカバンを作っていきます。

 

このオリジナル鞄はデザインからパターン作成(型紙おこし)、縫製、仕上げまで荒木社長が全て行います。

当然専門的に鞄づくりを学ばれたものだと思いお聞きすると、なんと全て独学!先代の鞄作りを間近に見ながらその技術を学ばれたそう。

「もともと工作とかモノづくりが好きでね、どうやって鞄作ってるのかジーッと観察して勉強したんですわ。それで「ここにポケットあったら便利やろな~」とか、「これがリュックにもなったらいいな~」とか、ひらめいたアイデアを鞄にしてて、ほとんど遊びみたいなもんですよ。沢山失敗もしましたしね(笑)」と荒木社長は楽しそうに話します。

見せていただいたE-Plusの鞄は多種多様で工夫がいっぱい詰まっています。

この形状も素材も様々な鞄をゼロから作り上げる技術は、メーカーからのサンプル作りの型起こしに役立っていて、デザイン画が送られてきた際に「この形状だったらここはちょっと縫いにくいので、この形の方がいいですよ」とか「このデザインならこうしないと実現しないですよ」などメーカー側にアドバイスもされているそうです。

「型起こしは経験を積まないとなかなかできないものなんです。私のは遊びばっかりですけど(笑)」と満面の笑顔で語ってくれました。

確かに手にした鞄はとても丁寧なつくりで軽く、どれも使いやすそうで、魅力がいっぱいの物ばかりです。

地域と共に歩んだ半世紀。長い歴史の中で数々の失敗もあれど、それを全て経験と技術力に変え挑戦を続ける荒木産業有限会社。

ブランド製品も手がける「ミシン技術者集団」と「何でも作れるアイデアマン社長」が作りだす新たなブランド鞄の可能性は3代目へとつながっていきます。