海外からも製品開発のオファーが来るグローバル技術系

2019/03/25

養父市上野にあるキタモトテックは、実は海外にも工場を持つすごい企業でした。話をお聞きするまではわからないものですね。事前のヒアリング段階ではこんなアンケートをいただいていました。

株式会社キタモトテック。1964年4月法人設立、電子コイル製造を行っている会社。

Φ0.018~3.2の線形範囲で対応可能で、とくに太線を用いたコイル製造を得意とする。自社内に冶具作成を目的として、3Dプリンターを保有し、冶具作成をスムーズに行うことで、他社にはないスピーディなコイル開発が可能となっている。試作開発力が高い。(短納期、小ロット可能)

文系記者には難しすぎました。。とにかく社長さんに会ってみましょうということで、インタビューにお伺いしました。

北本社長は、とっても気さくで、シャイな笑顔が素敵な話しやすい印象。それでは、さっそく素人目線で・・

電子コイルって?何に使われてるんですか?


記者
電子コイル製造業とお伺いしましたが、どのようなものに使われているか見当がつかないんですけど・・・
一番わかりやすいのは、小学校の理科の授業でやりましたよね。導線をコイル状に巻いて電気を流すと磁界が発生して、磁石になるやつ。
北本社長

電磁石と聞いて、少しだけイメージがわいた文系記者も、確かに小学校の時に実験でやった気がする。

その原理を活用して、自動カーテンレールなどのモーターや各装置の制御機器にも使われているとのこと。現在試験運転が進められているリニアモーターカーも電磁石を応用したものだそうだ。

記者
制御機器って、自動運転やIOTと関係があったりするんですか?
そうですね。センサーのON・OFFの切替を制御する回路の中で活躍するんで、電気自動車を含め、今までとは違う用途や市場が増えてきています。こればかりではなく新しい技術も出てきていますが、より精度を高めるためにコイルも使われているといった感じです。
北本社長

なるほど、精度の高い制御をしようと思うとコイルが必要不可欠ということみたいですね。

自動車の運転における人為的な事故を防ぐための制御装置として、シフトレバーの安全ロック用ソレイドなど、大手自動車パーツメーカーの開発部門を通してもお取引があるとのこと。すごい。

コイルというのは、陰で活躍する製品ですから企業の技術開発部門や専門部署の方からの問い合わせが圧倒的に多いです。
「こんなんできませんか?」という相談に対して、試作開発の段階から協力させて頂いています。
最近は、ベンチャー企業さんからのお問い合わせもあります。
北本社長

試作から携わっているというのは、時代の最先端って感じがしますね。

記者
創業当初から、バリバリの技術開発会社だったんですか?
もともとは、祖父と父が同時に立上げ、祖父が経理、父が生産に携わりスタートしました。順調な時代もありましたが、時代の流れで、徐々に海外に生産拠点を移すメーカーが増えはじめて、生産の約90%が海外に流れてしまったこともあります。
そのころ、私はもう既に当時の北本電機製作所に入社していましたので
「くやしい。いつか、うちも海外で生産体制を組みたい。」
と思ったのを覚えています。
北本社長

試作開発でナンバー1を目指すようになったのは、日本での量産の時代に限界を感じたからだそう。他でできないことをやる。分野問わず、お客さんが困っていることはうちが解決する。すぐに無理とは言わないがモットー。

他社にはできないスピーディな見積もり提出と、試作製造用の冶具がとにかく短期間ででき、開発がノンストップで行えるようにと、3Dプリンターも早くから導入しました。
北本社長

私自身、こうやって、お客さんと共同開発でビジネスモデルを考えたり、試作開発段階で困難と思われた技術を、従業員と一緒にクリアにしていくのが好きなんでしょうね。なんでも
「やってみましょう!」
と。(笑)
北本社長

人物。北本幸市郎。(キタモトテック代表取締役)

北本社長は、1972年生まれ。地元の商業高校に入学、当初は設備関係の公共事業に関わる仕事に従事していた。

実は家業がいやでした。(笑)
説得されたというのもありますが、当時の設備関係の業務が一時的なもので先はシェアの奪い合いだなということもわかっていましたので、先を見越した上で二十歳のころ株式会社北本電機製作所(現キタモトテック)に入り、現場からスタートしました。後継者だからと甘やかされた部分はあると思います。祖母は結構厳しくて、だけどそれがあって、今があると思っています。
北本社長

代表になったのは30代になってからだが、20代後半から状況をは概ね把握していたので抵抗はなかったそう。ただ「会社を継続しないといけない」というプレッシャーがあり、経営的に厳しいときに代替わりしたので、自社の数字を見ることからスタートし、色んな取り組みを行った。
その中のひとつが、海外進出。

海外生産にシェアを奪われた時の悔しさがバネとなり、大手の下請けを経て、試作開発から関わる業務形態へと変化させ、経営革新計画の認定も受けた。

縁で繋がり、技術で信頼を得た海外企業との共同開発。

中国での展示会に、コイルを売ろうとして出たのではなく、部品探しを目的に出展したキタモトテック。その時、たまたま杭州から来ていた今の取引先が、製品開発に課題があり、できる技術をもつ会社を探していて展示会を訪れ、縁が繋がった。

取引先からコイルを作ってほしいとの依頼に、
「できるかどうかわかりませんが、やってみましょう!」
とチャレンジしたことから、製作に成功し、今も継続してお取引があります。
北本社長

実はこの話には続きがあった。

後から聞いた話によると、杭州の副社長は、出会った当時取引先から、
「ドイツの機械購入を考えている」と聞かされていて、
何とかして自社の機械を売りたいので、性能を上げるためにセンサーコイルの開発を進める必要があった。
しかし、巻き線がどうしてもうまくいかず困っていたところに、たまたま展示会で出展していたキタモトテックに声をかけたらしい。

副社長曰く、
「北本さんのコイルのおかげで、ドイツの機械を超える性能が出てしまい、取引先に販売できた」
とのことで・・・。
「それがきっかけで、共同開発になったんですけど」
って。
もっと開発費を請求したらよかった(笑)
北本社長

と冗談っぽく笑う北本社長。
世界で認められる性能が出せるコイルを作れるキタモトテックの技術はすごい。

展示会に出てよかったし、チャレンジしてよかった。業務はみんなに任せてますが、その技術にチャレンジした自社の従業員はすごいなと改めて感心しました。
北本社長

大事にしていること。

北本社長は、従業員さんに対して『契約は必ずどんなことがあっても守る。』と心に誓っているそう。
黒がカッコよく動きやすそうなユニフォームの従業員さんたち。取材に伺ったのは冬でしたが、室内は暖かく、精密部品を扱っているだけあって、清掃がとても行き届いていている様子。

お客様に対しては、困っておられていることを的確に判断し、それをクリアにして、解決するのがうちの役目。そこから、取引が始まったりもします。
ミッションですね。「使命です」よくそう言います。(笑)
北本社長

これからのキタモトテック。

早く情報を伝達して、試作に入らないと他社には勝てない。国内だけを見るのでは面白くない。世界は広い。
最近の開発依頼では、難しい要件を満たすのが課題という。人間の目では見えないところ、普段見ないところにある安全性や課題をクリアにしていく技術。お客さんの高度な要望に、技術でどう答えるか。日々の研究開発が続く。
そしてそれは、確実に私たちの未来を支えている高い技術でした。